2024.1.14

ジョン・アレン愛機レプリカ制作-次は15号機0-8-0

ジョン・アレンのG&D鉄道蒸機群のレプリカ制作、というプロジェクトも、いつしか10年
越しとなってしまい、N.M.R.A.より依頼の焼損三機の修復をこなして以後、しばし中断状
態でしたが、どうしても手掛けたいものは、あと5台はあります。いずれも、ベースにす
る製品はすでに確保済みで、いつでも着工はできる状態、うち3台はすでに仕掛かりです
が、少々大仕事で、目下中断状態です。

しかし、そろそろ新顔を見たくなり、未着工ながら、さほどの手間なく完工しそうな4台
目を先に手掛けることにしました。

それは「15号機」。0-8-0テンダーの、いわゆるスイッチャー・タイプです。アレンがベー
スとしたのは、「U.S.R.A.標準タイプ」。これは、実車は、第一次大戦参戦に当たって、
予想される戦時輸送の車輛不足に備えて、政府が主要鉄道の車輛計画に介入、統一した標
準設計によるハイ・ペースでの増備を図ったものでした。なかでも0-8-0は0-6-0,軽2-8-2
と共に各鉄道から大歓迎された機種で、戦後なおしばらく、同型機の自社発注が続いたほ
どでした。(最後の新造例はなんと1953年)

模型にあっても「どこにいてもおかしくない罐」、かつ「金型の繰りまわしが利く」とい
うことで、供給側にも人気があって、HOではいくつもの社によって、繰り返し製品化さ
れてきました。特に0-8-0は、小型レイアウト向きであることから、1950年代以来、主に
ブラス・モデルとして、生産、販売が行われました。一番知られるのは天賞堂製で、同社
が量産手法のブラス製蒸機を手掛けるようになった初期の1956年以降、累計で2200台近く
をPFMに供給されています。

アレンは、この「U.S.R.A.0-8-0」を「5号機」として採用し、彼得意の「テンダー交換」
で、ペンシルヴァニア鉄道の「スローピング・バック」(後方傾斜)タイプに交換しまし
た。1962年以降に「15号機」に改番し、そのころから、テンダーの前位台車を「フランク
リン式」ブースター・タイプ、つまり、サイド・ロッド付きに変更し、特徴ある姿に仕立
て上げているのです。

ただし、アレンの数あるレイアウト写真の中にも、本機が登場しているものは非常に少な
く、私がいままで見つけたのは、「5号機」時代が斜め前と斜め後方から各1点、「15号機
」時代が、斜め前方からの1点しかありません。「5号機」時代のは、どちらも小さな写真
の、その中に、これまた、ごく小さく映っているだけです。

しかし、アレンがテンダーにフランクリン式ブースター台車を付けていたのは35号0-6-6-0
と、この15号機だけで、ひときわ目立つ存在ですので、私としては両機とも、ぜひレプリ
カ制作を実現したいのです。

問題は、彼が、機関車本体、テンダー、それぞれに、「どこの製品を利用したか?」です
。これを探し、特定するのが、まず大いなる愉しみなのです。この「5/15号」の場合、例
の「ジョン・アレン写真集」の機関車一覧表には「1950年にG&D自社工場でパーツから造
られた」とのみ記載されていますが、写真から見る限り、機関車本体はどう観てもブラス
の既製品利用らしく、見るからに.U.S.R.A.0-8-0そのものです。アレンがパーツから制作
したのなら、もっとフリーランス的なデザインにするでしょう。しかも、1950年では、キ
ャブ回りなど、まだ、これほどスケール・モデル水準のパーツは販売されていなかったで
しょう。

では、U.S.R.A.0-8-0のブラス製品として一番古くからあった天賞堂製かといえば、キャブ
のシャープさから、もっと後年の設計に見えます。天賞堂製は、味のあるモデルで、私も
好きですが、アレンの写真にあるものほどシャープではありません。

量産のブラス製品で次に古いものは、アカネ製なのですが、アレンの機が「遅くとも1962
年にはすでに存在していた」となると、年代的に微妙です。

で、結局のところ、機関車本体の出自は分からずじまいなのですが、キャブの雰囲気がア
レンの写真のものに近い、アカネ製を使うことにしました。

テンダーの方は、こちらはブラス製ではない可能性もあり、そうなると、この、スローピ
ング・バックのテンダーを持つペンシー機は0-4-0のA5、0-6-0のB6系とB8で、こちらは、
半玩具的なものまで含め、ダイキャスト製もプラ製も、製品化例が多く、何を使ったのか
の特定が、これまた困難です。

半玩具のようなダイキャスト製やプラ製は米国での中古価格も安いし、ブラス製も、テン
ダーだけの放出品が時折ebayに出てきますので、それらを6種ほど買って、写真と見比べ
てみました。これも完全に特定はできませんでしたが、傾斜面の右側を登っているステッ
プの段数+ペンシー独特の筒型マーカー・ライトの具備から、半玩具の「アメリカン・フ
ライヤー」によるダイキャスト製が「一番近い」と判定し、それを用いることにしました

フランクリンのブースター台車は、かつて天賞堂が別売していたもので、今や、即使えて
、見栄えもよいのはこれだけですので、米国では人気があり、中古相場は決して安くあり
ません。今回もebayで競り落としましたが、ほかに、どうしても欲しいらしい競争者があ
ったので、何と台車1個(1ペアではなく)で120ドル超えです。機関車の方は数年前の入
手で、まだ米国のインフレが激しくなかったころでしたので、186ドル。それも当時の円
ドルのレートは120円くらいで、このところは140円超えですから、ブースター台車が一番
高くついています。ここまで来ると、レプリカ制作も、もはや執念ですね。

で、とりあえず、テンダーにブースター台車を付けたところをご覧に入れます。第2台車
との上面高さの差は0.4㎜で、ワッシャで調整できました。アレンはこれに炭庫の大増量を
行っていますので、次の工程はそれにトライです。