2013.9.14

アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.74

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今週のハイライトは昨日、もう東京では絶滅危惧種といわれる米国型ブラス・モデルの仲間である佐藤一郎氏と元綱正道氏が来訪され、午後から夜まで3人でD&GRNでの運転を楽しんだことでした。

元綱さんは慶応大学在学中から「とれいんギャラリー」に頻繁に見えていた長いお付き合うで、佐藤さんはその大学時代からの親友。お二人とも車輛のコレクションだけでなく、レイアウト・テクニックにも唸らされるようなセンスをお持ちです。好みの車輛のセンスも佐藤さん、元綱さん共に北西部の諸鉄道とサザン・パシフィックの蒸機時代で私とは共通の話題が尽きず、さらに佐藤さんは小荷物専用列車とかローカルの短編成客車列車とかが大好き、という、これまた私の宿念のテーマを共にしている稀有の存在です。

残念ながら二人とも日本の超一流企業で責任ある立場なので、滅多に時間が揃わず、今回は2年ぶりのセッションでした。

それぞれ機関車、客車併せて20輛ほどを持参されましたが、中でも白眉は元綱さんの「サザン・パシフィック、ブラックGSの牽くサン・オーキン・デイライト」と佐藤さんの「ノーザン・パシフィックAクラスの小荷物専用列車」でした。

「サン・オーキン・デイライト」はサザン・パシフィック鉄道がサン・フランシスコとロス・アンゼルスの間を、海岸沿いの本街道(「コースト・デイライト」のルート)ではなく、内陸砂漠側の「サン・オーキン・ヴァレー」を辿るいわば裏街道で結んでいた列車で、SP最後の蒸機牽引特急にもなった列車です。ブラックGSは本来特急「デイライト」用にカラフルに塗り分けた流線型4-8-4であったGSクラスが晩年高速貨物用や通勤列車用にスカートを外され、銀色の煙室および火室底部周り以外は黒一色、というSP蒸機の標準色に塗り替えられた晩年の姿で、ヴァレー・ルートではこの姿でカラフル、しかもフル・ドーム・ラウンジ・カーを連結した「サン・オーキン・デイライト」を牽いていました。

つまり、SP蒸機のファンでも、相当に本を読み込んだディープな人なればこそ思いつく編成です。しかも、元綱さんはこの編成実現のために、フル・ドーム・カーと、それに対照的なダブル・ルーフ6軸の重鋼製食堂車を未塗装で入手して、あの厄介なデイライト色(何が面倒といって塗り分け線ごとに銀ストライプが!) で2輛を仕上げています。

さらに「サン・オーキン・デイライト」はヴァレー・ルートの名所でいま史跡にも指定されているテハチャピ・ループを越えるのに、これもSP名物であった「キャブ・フォワード」(運転台を前頭に置いた連接式蒸機)を前補機に使っていましたが、元綱さんはこれもちゃんと用意してきたという周到ぶりがお見事でした。

佐藤さんの「ノーザン・パシフィックの小荷物列車」は、世界最初の4-8-4軸配置であったAクラスに、ボックス・カー型で客車台車を履いた木造の急行便用冷蔵車と、それから派生した小型手荷物車(ドアー寸法で2タイプある)を連ねて、最後に職員と便乗用に「コーチ/スモーカー」(喫煙室つきの座席車)を、これも木造車として連結した、プルマン・グリーン一色の渋い編成で、小荷物車に連なったNPの巴マークが見事でした。オール・ブラス編成でしたが、Aクラスが単機奮闘してよく勾配線を克服する、すばらしい走りを見せてくれました。

二人とも、こうしたディープな編成を何の事々しい解説もなくさらりと持って来るところが迎える側としてもうれしい限りです。

両氏からも、現場を前にしての、D&GRNで勾配での重牽引や安定走行のために市販製品の車輛に施している種々の対策についてこもごも質問がありましたが、そういう情報を共有することでまた今後の入線車輛のバラエティーが拡がって行くことでしょう。通常の貸し会場での運転会と固定レイアウトでのセッションは、この辺りが違うかもしれません。

夕食を挟んで8時間あまり、実に楽しい一日でした。

見慣れたレイアウトでも他の人が運転する列車を眺める、というのはまた違った趣きのあるものです。このレイアウトは、将来的には(来るのか、そんな日が?)4,5人が分担しての運転もできるような構想で進めているのですが、その予行演習としても参考になりました。写真は運転に興じる元綱さんと佐藤さん、です。