2013.8.18

アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.62

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『LB4』をお買い上げくださった方には、中をご覧になって「あれ?」と思われた部分がおありになったのではありませんか?「川原へ」の部分ですが‥

そう、プロスペクターズ・クリークの畔で砂利取りにいそしむマリオン蒸気ショベルです。あのボイラー、水はまあ、川から組み上げているとしても、燃料はどうしているのでしょう?石炭焚きにしても石油焚きにしても、周囲にそれらしい貯蔵施設は見当たらないではありませんか!

作者である私においても、その課題は当然ながら気になっていました。「地上に何か石炭囲いでも作るべきか、それとも古テンダーのような車輛を連結するべきか?」

しかし、地上に何か設備を造ると、「何も無い、がらんとした川原」という設定に対して、場面がせせこましくなりそうでした。蒸気ショベルのボイラー室に高さを揃えるとなると、どうしても一定のボリュームが出てしまいます。蒸気ショベルの移動範囲に対応させる必要もあります。そういう条件を加えると、ますます大掛かりなものになってしまい、主題がかすんできそうでした。そもそも川原の水辺近くですから、いつ大水が出ないとも限らず、そういう場所には固定設備は設けないでしょう。流されちゃいますから‥

それで、置くのなら、何か、大水が出たら蒸気ショベルと一緒に退避できる補助車輛だろうなあ、とは思ったのですが、ロッキー・ナロー系のゴンドラ・カーやフラット・カーを試しに置いてみると、明らかに大きすぎるのです。

レイアウトとは「配置する事」ですから、実物の理屈よりも物の納まりの良さがまず大事です。これは、私がずっと大切にしてきた視点です。

こうなるとカリフォルニアのロギング・ナロー系かなぁ?とアメリカン・ナローの宝庫、新額堂で物色し、デュランゴ・プレス社の「ウエストサイド製材会社フラット・カー」を買ってきてみました。この上に板囲いでも作って、石炭供給車にでもするか?と考えたのですが、これもホワイトメタル一体鋳造のボディーが何となく肉厚で、蒸気ショベルに勝ってしまいそうです。

新額堂のケースに並んでいるHOn3のブラス製テンダー(ロッキー・ナロー系)にも大変惹かれたのですが、これも立派すぎるかなぁ‥川原を隠すものが増えすぎると狭く感じるようになる心配があります。

こういう、「必要だが、存在感を出してはいけない役割」つまり脇役の程よさ、というのは難しいですね。

で、私はこういう、考えのまとまらないとき、試してみても今ひとつピンと来ないときは、その現場から一旦遠ざかることにしています。無理にやっつけてしまうと、作った本人に一番気になって、いつ眺めても気分が落ち着かなくなるからです。

で『LB4』のための撮影でも、とりあえず雰囲気だけをお伝え、と割り切ってしまいました。まだ、佳い出会いがあるだろう、と‥

そのまま半年が過ぎた暮、何の気なしにインターネットで面白いキットが出ていないか眺めていましたら、同じウエストサイド製材会社のフラット・カーですが、私がデュランゴ・プレス社のキットを手にして考えたのと同様、車体半分、上に低い板囲いを廻した「サンド・アンド・グラーヴェル・カー」、つまり“土運車”がキットになって発売されているのに出会いました。作例写真を見ると、デュランゴ・プレス製よりやや痩せ型で、「片隅の作業車」という役どころをちゃんと心得ている風情です。

発売元はシンプソンというメーカーで、私もウエストサイドもののディカールの発売元としては記憶していましたが、いつの間にかこんなキットのバラエティーも出していたのですね。(ウエストサイド教祖、須々木裕太氏に「いまごろ何いってるんだ!」と不勉強を叱られることでしょうが‥)

「そんな、板塀を横倒しにして台車つけたぐらいの車、自作しろよ」といわれそうですが、どうもアメリカ型の場合、フィート、インチをミリに換算すると、あの独特の粗野さが消えてしまうようで、私にはいまひとつ自信が持てないのと、どうせインチ規格の材木やら台車やら手配するとなれば、手間も足代も掛かってしまうことですから、それなら「キットという情報ごと」買ってしまって、それを土台に味付けする方が早手回しです。要求にジャストのキットが見つかった時の悦び、というのも格別のものがあります。「俺のためにこのキットは生まれたのだ!」という‥

で、早速注文したのが、先週になって届きました。封筒に入れても良さそうなぐらい薄ぺらのパッケージでしたが、きっちり梱包してくれたので品代と送料がほぼ同額。内容はブレーキシリンダーと台車ボルスター、車軸が金属製以外はプラスティックで、非常に薄い仕上がりです。木目の感じもよく表現されています。1980年設計、と説明図に記載がありますから、もう30年前の製品ですが、よく残っていてくれたものです。米国の鉄道模型界は、こうした小メーカーの製品がいつまでも消えないのも素晴らしい点です。

さて、キットの購入ですが、私には大変悪いくせがあります。それを入手すると安心してしまって、いつまでも組まずに置いとくことです。「この間買ったあれはどうしたの!一つ組んでから次のを買いなさい!」と少年期は母によく苦言を呈されたものですが、結局直りませんでしたね。まあ、夢を買ってしまう、というか、よく言えば「長期計画に基づいている」というか、ですが‥その象徴が、昨年、30年以上の時空を超えて組立てを再開したら1週間あまりで完成した「アスペン砂利会社専用鉄道の機関庫」です。

しかし、人間60を過ぎると、目も手も足腰も頭も、いつだめになるか、少なくも不確実性は減らないわけですから、そう「長期計画」とのんびり構えてもいられません。

で、私としては異例中の異例ですが、今週このキットに早速着手したのです。こんな簡単なキットまで棚上げしていたら、在庫が増える一方です。逸る心を抑えて、プラモデルのセオリーどおりパーツごとに塗り分けておいて組んでいきましたので、こんな小さなフラット・カーでも、毎晩15分から2時間程度、足掛け4晩掛かってしまいましたが、できました。今年はいまのところ工作快調ですね。

組立ては、少量のゴム系接着剤を位置決めの補助に使って、接合の隙間にはアクリル用接着剤「アクリサンデーを面相筆で流し込みました。

「重い蒸気ショベルは河原に常置されて、ボイラーの検査時ぐらいしか、丘の上の車庫には上げないそうですが、石炭車は二日に1回程度、引き上げられて、車庫に石炭を補充しに行くそうです。」という説明を『LB4』の「川原へ」にお加えください。