アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.52

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月刊『とれいん』の仕事をしていた時代(もう‘時代’ですよ)からの悩みで、いまも『レイアウト・ビルダーズ』や『Rails Americana』の記事の執筆で迷い続けていますのが、外国の固有名詞の書き方です。

つまり、原語のまま欧文で書いておくか、カタカナ表記に直すのか、という課題です。

原文のまま出しておくことの利点は「自分でも正確な発音を知らない、自信が無い、というときに絶対間違いない」ということです。読者の中には博識な方も大勢あるし、また留学経験のある方などは「実は現地ではそう発音しない。正しくは‥」というような投書も来る、なかには模型店、いまならネットで「だからあいつの記事は信用してはいけない」などと言いふらす人もありますから、安全を図るなら原文表記が絶対です。ですから、昔、多くの実物誌の先輩方は圧倒的に原文表記で書いておられました。

たとえばSn3のモデルを専門的に発売しているP.B.L.というメーカーの所在地はカリフォルニア州のUkiahという町(の裏山の頂上)ですが、これ読めますか?

日本で相当に英語のできる人に発音してもらったら「ウキアだ」というので、私も長年それに倣っていました。ところが先日の旅でコロラド入りする前にP.B.L.を初めて訪問して訊きましたら、「ユカヤ」というのが正解なのだそうです。やはりインディアン語から出ているそうです。こうなると落語の「一目上がり」ですね。長屋の八五郎が掛け軸の呼び方に見当をつけて先回りするたびにはぐらかされる、という‥こういうのは欧文混じり文で「Ukiahでは」と書いておけば万事無事なわけです。

しかし、自分で雑誌に外国の記事を書き始めたとき、ふと考えました。「こうして発音も分からない原文で書くから、読者の地名のイメージなどが出来ないので、とかく外国ものの記事は敬遠されるのではないか?」と‥

そこで、自分としては外国の紹介であっても、読者になるべく読みやすくて興味を持ってもらえるよう、欧文はカタカナ表記にすることを原則にしました。『とれいん』でも、自分の書くもののほとんどはそれを貫いていましたが、おかげさまで外国ものも楽しみにしてくださる読者が一定数得られたのには、これは役立ったのではないか、と自分では考えています。

ただ、カタカナ表記に統一するのはなかなか大変なのです。先ほども書きましたように、自分でも正確な発音は知らない、また微妙でカタカナではどちらが近似値になるのか、判断がつかないものもやたら出てきます。また、現地では正確、といっても、その通りにカタカナかすると、今度は日本の一般の方には却って理解できなくなってしまうケースもあります。

たとえば、米国では圧倒的な確率で、「A」は「オ」、「O」は「ア」と発音した方が、簡単な話、通じやすいのです。かつてUPとSPの接続点だったユタ州の「Ogden」は「オグデン」と読むより「アグデン」の方が近いようです。江戸明治のように漢字で表記すれば、さしずめ「亜具伝」でしょうか?

同じ伝で、米国で試してみると「Ohio」も「アハイア」の方が「オハイオ」と発音するより通じます。「Oregon州」も「オレゴン」よりも「アレガン」の方が発音には忠実のようです。

しかし、「アハイア」、「アレガン」と書いたのでは日本のほとんどの読者には余計判りませんし、ね。

かつて「鉄道ファン」誌の版元、交友社では「国土地理院の見解に依拠した地図帳に合わせている」といっていましたが、鉄道に関した地名なんて、多くは日本の地図帳に出ていないような片田舎のちっぽけな町や村ですから、TGVとかの記事ならまだしも、米国の蒸機にまつわる話ともなれば、そうお誂えには行きません。自分でも読めないときにだけ原文表記、という方法もないではありませんが、これは文字面、つまり見た目がきれいではありません。

結局、自分の用字基準としては「なるべくスペルが想像しやすい、ローマ字読みに近いものにして、もし読者が言語で見たときにも、ああ、あれか!と理解できるようにしておく」というものにして、現在もほとんどのケース、そうしています。

たとえば「Los Angels」は「ロサンジェルス」ではなく、愚直に「ロス・アンゼルス」、というように、です。

ところがカタカナ表記は別にもう一つ困る問題があるのです。それは鉄道名などがカタカナで書くとやたらスペースを食って、短い文章スペースの時にはそれだけで字数が一杯になってしまうおそれがあるのです。Denver and Rio Grande Western鉄道と書ければ、まだしもスペースを食わないで済むのが、デンヴァー・アンド・リオ・グランデ・ウエスタン鉄道と書くと、ご覧のように長くなってしまいます。結局、表記方法で「どんなケースにも万全」な統一基準というのは至難ですね。皆様が何の気なしにお読みなる記事1行の裏側で、書く側は、こういう苦悶もしているわけです。

で、模型の記事となると、実物関連の地名のほかに、人名やメーカー名が入ってくるのでさらに厄介です。先週もちょっと触れましたが、欧州のメーカーと米国のメーカーの名前を混在で書くときなどは悩みますね。皆様にお薦めしたい製品もあるわけで、片仮名表記だけでは店頭のパッケージに結びつかないと困りますし、たとえば人形のPreiserなどはドイツのメーカーですから「プライサー」もしくは「プレイサー」と書くべきでしょうが英語読みの「プライザー」の方が、どうも一般化しているようです。この辺りは皆様どちらがわかりやすいのでしょう?

そんな混迷?に光明を与えるようなお手紙を、私の『とれいん』時代からの愛読者で当時もたびたび読後感を寄せてくださった岡田広一氏からいただきましたので、ご紹介します。

ご本人はシェークスピア時代の英語の研究をライフ・ワークに、大学で英語の教鞭をとっておられる言語学者であり、また熱烈なナローとトロリーのモデラー、楽しい小パイクの製作者です。

親愛なる大酋長さま

岡田 広一です。お元気でなによりです。

「今週のモデル・ライフ」を毎週楽しみにしております。

さて、ドイツなどの読み方について、おせっかいをいたします。貴兄の考えておられる発音で、ほぼ問題ありません。なああんだ、ちゃんとわかってらっしゃるじゃあないですか。

BUSCH は「ブッシュ」です。英語の BUSH と同じく、よくある苗字です。
WISE & WALDの 正しいつづりは WIESE でした。「ヴィーゼ・ウント・ヴァルト」は「牧草地と森林」ですね。

KLEINTIER SET  「KLEIN 小」 「TIER 動物」の TIER は、現在の標準的な発音では「ティーア」ですので、「クラインティーア セット」です。画像を見てこれを入手したくなりました。色を塗るのがたのしみですが、タイヘンでしょう。

ところで、ドイツ語の Tier は「動物全般」を意味しますが、同じ語源から生まれた英語の deer は意味が変化して、「シカ 鹿」の総称になり、英語の「動物」としては、beast や animal が使われるようになりました。ドイツ語の Hund (フント)は「犬」一般なのに、英語の hound (ハウンド)は「猟犬」、というふうに意味の特殊化が起こっています。

NOCH は「ノッホ」です。 FALLER のほうは、あまり伸ばしすぎないで、「ファラー」に近い発音でしょう。これは英語の苗字としては FALLER 「フォーラー」ですね。木を倒すひと、「きこり」の意味です。

Static Grass は英語ですから、「スタティック・グラス」 静電気は static electricity です。しかし、「静電気草」と言うよりも、「静止した草 動かない草」のほうがよいですね。

Heki は「ヘキ」なんでしょうね。GrassHopper は英語のまま「グラス・ホッパー」でしょう。

以上、カンタンにお知らせします。


小生の地味なブログ『神戸発 鉄道日記』にめずらしく国鉄の特急が登場しております。  http://blog.ap.teacup.com/railsfromkobe/
覗いてやってください。

さて、今週のD&GRN鉄道からの報告としては、先週の「クレメンタイン村入り口」の草地に続く、「クレメンタイン・カーター記念学校」の校庭にいよいよ人形を配置しました。

昼休みか、放課後か、とにかく授業が終わって、子供たちが一斉に校庭に出てきた、というイメージです。相当な幼児もいますから、村の小さな小さな学校で、小中学校から幼稚園まで、村の児童数の変化に現実的な対応をしている、というところでしょうか?

実際には学校の一日は校庭に子供の姿が無い時間帯が圧倒的に多いのでしょう。私もそう思って、当初は校庭は遊具だけにしようかと考えていたのですが、そうしてみるとどうも学校らしさが浮き出てこないので、やはり賑やかにしました。

しかし、実際に子供の数を集めるとなると結構大変です。プライサー製品を主に、ウッドランド・シーニックのものも一部加えましたが、「初夏」という設定で、半袖姿にそろえるとなると、さすがのプライサーの豊富な製品群の中からも、結構限られるのですね。ちょっと寒がりでカーディガンを羽織っているぐらいまでは可としても、ジャンパー、マフラー姿と半袖は混在させられませんからね。夏前からウォルサーズのカタログと首っ引きで、ようやくここまで集めました。

D&GRNでも建設途中(今もですが)では長い年月、人形は極少数しか配置していませんでした。無論、倒す、無くす、を怖れてのことですが、そういう時期を過ぎた、ここ7,8年、積極的に「人形が語るレイアウト」をテーマに、各人形の動作を大切に、ある意味、レイアウト各シーンでのテーマ作りの基本にさえ位置づけていますが、そうしてみると、レイアウトの本場、アメリカ、ヨーロッパでさえも、まだまだ人形は圧倒的に「漫然と配置されている」という観があります。

居ないところにはスコーンと居ない、居るところには集中して居る、という風に粗密を付けることと、シーンごとに一度人形を揃えてみて、不足している役は無いか、あと、どうんあ人物、動作があればストーリーになるか、見当してみるとよいように思います。自分でもここ15年ほど、買い物で一番熱が入っているのは実は人形のように思います。