アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.35



週の写真もNIKON D7000をレイアウト上に目見当で置いて、カメラに勝手撮りさせたものです。

場所はすでにおなじみになったのでは、と思いますが、クレメンタイン村の入口、「クレメンタイン・カーター・メモリアル・スクール」前の線路際から、進入してくる列車を写しています。

編成はメリーランド・アンド・ペンシルヴァニア鉄道(Ma & Pa)の4-4-0、No.6が同じ鉄道のオープンデッキ木造コーチを牽いています。モデルは、機関車はオーヴァーランド・モデルズがプロデュースした、初期の韓国製ですが、非常にバランスが良く牽引力があるところへ、自分でモーターをコアレスに換装したので、素晴らしい走りを見せてくれます。

客車はメーカー不詳の日本製ですが、これも車輪をベアリング軸つきに交換していますので、4-4-0が牽引するにはもってこいです。

私は調大型機のファンのように思われているようですが、米国型への興味が、もともと西部劇の世界への憧れに端を発しているだけに、実はこういう規模の列車が本来的には好きなのです。

こういうサイズの列車を楽しみたいために、複線では大げさなので、クレメンタイン支線を造ったわけで、ジェッツ・ウエルとクレメンタインの間のシーナリーやストラクチャーがほぼ出来上がったというのは、今年前半のモデル・ライフでは一番の満足です。

このように仕上がってくると自分でも着手前の眺めを忘れてしまうのですが、この「モデル・ライフ・レポート」を皆様にみていただいているおかげで、今年1,2月ごろの写真から見ると、自分が驚くほど変貌しています。

「大門通り」の照明とかにも手を出していた割には、自分なりに結構、気を入れていたのですね。時間を用意して一気に大きく作ろうとするより、日々少しずつ、無理なく出来る範囲の小工作の積み重ねの方がやっぱり、「日陰惜しみて励みなば 如何なる業か ならざらむ」ですね。(明治天皇の后、昭憲皇太后が作詩されて女子学習院の生徒に賜った唱歌「金剛石」の一節で、私の大好きな歌です)

樹木は「ミニネイチャー」(米国ではシーニック・エクスプレスが販売)の「スーパー・ツリー」に、同社の「ミニ・ネイチャー・シリーズ」草木から、樹木用の葉を絡ませたものです。「葉っぱ」は同社のいう「HO用」「N以下用」の両方、色も「春用」「初夏用」「盛夏用」を使っています。

このように緑の勢いの盛んな季節の表現には、「このシーンはこういう季節だから、表示に従って、この色ばかりで統一する」というより、その年の新芽が早く発芽するもの、遅く発芽するもの、艶のある厚手の葉、薄く透け気味の葉、などで異なった緑を混色した方が広葉樹の林は実感的、立体的になるようです。

今年は休みましたが、ここ数年、毎5月に通ったアパラチアの山中で汽車を待つ間、広葉樹の森を眺めていて気付いたことをやってみました。

概して、針葉樹林は一面同色、広葉樹林は多色混在になるようです。

こうして目線を下げた写真を撮ってみるのが、風景がちゃんとまとまっているかを確認するのに格好の手段なのですが、田舎街道の白々と陽に照らされた感じも、「ネラ」の線路端郵便局も、樹木の重なりも、われながら、ちょっと行ってみたくなる景色になりました。

「ミニ・ネイチャー」は現在、私が元居た「エリエイ」が輸入元になって、ウチの長男が鉄道模型店、ミニタリーモデル専門店を回ってはせっせとセールスしていますが、私共とは、こういう関わりがあります。

いまから15年ほど前、私自身がNMRAコンヴェンションに行き始めたころ、ロングビーチ大会だったか、その2年後のミネアポリス大会だったか、で米国最大のレイアウト用品専門店(通販とホビーショウ出展専門)、シーニック・エキスプレスのブースで、私より年が若い一人の紳士に声を掛けられました。

非常に分かりやすい英語を話すのは、彼がオランダ人だからでした。ゲラルド・ニーヴェンヒュージー(?-いまだに正確に発音できません)というのが彼の名前で、シーニック・エクスプレスが売り物にしているスーパー・ツリーの製造元でした。

彼はモデラーではないのですが、アムステルダムの郊外に広大なジャガイモ農場を経営しており、その敷地の一画に生えていた野草が地元もモデラーに「模型用に最適」といわれたのがきっかけで、それを本格的に栽培しはじめ、ニュルンベルクのトイ・」フェアーに出品した所、買い付けに来たシーニック・エクスプレスのオーナーの目に留まって、米国で大々的に売るようになったのです。

それで「日本にも販路を作りたい」ということで私に声を掛けてきたのでした。当時、日本にはすでにフライング・ズーなどによって「スーパー・ツリー」は米国経由で持ち込まれていましたが、大西洋と太平洋を越える運賃で価格は高くなってしまっていました。

それで「とれいんギャラリー」が輸入代理店になって彼の農場から直輸入し「広葉樹セット」の名で売り始めたのでした。

数年後、ドイツの「ミニ・ネイチャー」社(当時はシルフローといっていた)が画期的に実感的な草のマットを考案し、取引のあったゲラルドに「これもアメリカと日本に売って欲しい」と持ちかけました。

ところが製法が特殊なだけに高いし、その上、販売の裁定サイズが大きいために一色1タイプが5,000円を超えてしまう。「いくら素晴らしくたって、そんな高い草は日本では売れない」という平井さんの反対で、こちらはなかなか取引開始になりませんでした。米国でもシーニック・エクスプレスのカタログに載せたものの、やはりそれほど売れなかったそうです。

何年かの折衝の末、毎年来日するようになったゲラルドに、私は次のように提案してみました。「まずサイズが大きすぎる。ヨーロッパの牧草地や博物館のレイアウトの巨大な山を造る以外に、レイアウトには一つの色、タイプをそんなに大きく使わない。もっと小さいパッケージにして、たとえば5,000円でも何色か買えるように、それから品目ごとに細かく価格が変わるのでは買うときに暗算しにくいから、単一価格で内容量を変えるようできない?」

このアイディアをゲラルドがミニネイチャー社に伝え、早速試作ロットが出来上がったのを、ちょうど年末商戦時期だったので、ゲラルドはまず米国へ持ち込んでみました。

そうしたら、いままでシーニック・エクスプレスでもほとんど売れていなかったのが突如大ブレークしてしまったのです。ミニネイチャーの方がむしろびっくりしてしまって‥

続いて、日本でも私共が発売したのですが、「この価格なら何とか売れるのでは?」と、多くの高級模型店が扱ってくれるようになり、いまではレイアウト・ビルダーの皆様にもすっかりおなじみになりました。

ちょっと、商売の話になって恐縮ですが、ゲラルドとウチの長男が相談して、もっと小単位で使いやすく、多種を同時に買い易く、ということで、このほど、従来の「ミニパック」の約半分量で価格は税込み500円台(予定)という「マイクロパック」を開発、近々発売するようです。

つまり、あの「ミニ・ネイチャー」は単に外国の製品をそのまま買い付けて販売しているのではなく、私のレイアウト・ビルダーとしての意見が販売形態の決め手になった「独日蘭」合作製品なのです。

「マイクロパック」は特に、個人単位では使用量の少ない、特定色の花とか枯れ枝、つる草などで「ちょっと使いたい」にお得と思います。是非、ご愛用を!(と宣伝しても私はコミッションにサンプルを数個もらえるだけなのですが)