アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.33




それにしても、固定レイアウトを維持する、というのは、やるべき仕事も多いですね。今年に入って、クレメンタイン支線に集中していたため、気がついてみたら本線の運転をあまりやっていなかった。それで、この1週間は久しぶりに本線のメインテナンスを兼ねて列車を毎日周回させることに務めました。

メインテナンスといっても、私の場合はセンターライン社のクリーニング・カーに指定の柑橘系洗剤を染み込ませて数周させ、接触の怪しくなったポイントの先端レールを掃除する程度。あとはひたすら、長編成列車を走らせて、線路上の埃を蹴散らしてしまう、というものです。頻繁に運転するのが、固定レイアウトでは何よりのメインテナンスです。

D&GRNの場合、設置場所が窓も皆無、生活空間と遮断され、綿ぼこリが入り込む余地が最小限に抑えられている、という環境にあることがメインテナンスには大きな効果を発揮していますが、3、4週間運転しないと、レール・クリーニング・カーの出動無しには中小型蒸機やB-Bの内燃車輌にはちょっと厳しくなります。

でも、レールを常にクリーニング液で鏡面のようにピカピカにしてしまうと。勾配区間では牽引力はかなり削がれてしまいます。D&GRNでクリーニング・カーを使った直後はどんな機関車でも牽引定数は通常の2/3か半分ぐらいまで落ちてしまいます。そうなると一晩は乾かさなければなりません。「明日、お客さん」という時にはちょっと冷や汗ものです。

レールを極力汚さず、スムーズな運転を確保する対策として一番効果があるのは、とにかく集電が確実で消費電力が小さく、ノッキングしない動力車と、よく転がるトレーラーを作ることに尽きます。

消費電力が大きいか、集電が不安定な動力車が一番レールを汚します。消費電流を小さくしてやるのは比較的簡単です。モーターを回転力に余力の在るものに換えてやればいいのです。

ところが、「集電の不安定」。ブラスモデルの場合、これが、なかなか厄介です。メーカーや販売店での1m程度の直線レールの往ったり来たりの試走でちゃんと走るのは当たり前でも、それがレイアウト上に出て、テンダーの連結器には大きな負荷が掛かる、カーヴで車体はひねられる、車輪は寄る、カーヴ外側の車輪は浮き気味になる、といった条件が加わると、電気的接触は設計者が図に描いた通りには行かなくなります。

特にここ15年ほど、米国型蒸機の製品では、ロストワックス製のテンダー台車のディテールをより細かくしてきて、そういう措置が車輪のレール面への接地の不確実の原因になっていることが増えました。軸穴をキャストしたままにしているケースが多いのも、これに輪を掛けているようです。

加えて、商品としての見てくれを良くするために、台車が垂れないようボルスター・ビスのコイル・スプリングを硬くしてある、工夫している積りで、実は接触が不安定なワンタッチ・ドローバーを採用している、なども通電を却って不確実にしています。

2線式集電の蒸機の模型で、車輪からの集電を確実にしてやろうと思ったら、機関車本体の絶縁側車輪にも集電ブラシを設置するのが一番確実なのですが、これも近年のブラス製品は主題枠下面にブレーキ引き棒を表現するのが標準になってしまって、そうしたスペースが取り難くなっています。

1980年代までの製品には、こうした事は、先ず少なかったのですが、近年のブラス製蒸機には、買ったままでD&GRNの勾配線を列車を牽いてスムーズに登りきるものはまず皆無です。最低でもテンダー台車のボルスター・スプリングはスパイク製の柔かい燐銅製に交換するのですが、これがまたビスの胴径と合わなかったり‥まず何がしかの作業は必要です。機関車の方にはギヤー・ボックスの両側のボイラーの隙間に自分で考案した半月型のウエイトをびっちり詰め込んで粘着力も高めます。

まあ、そうした果てに、製品そのままでは得られない性能を発揮させるのが楽しみの一つなのですが、その対処法も新製品毎に異なるので、頭は使います。まだ未加工や、改修は試みたものの、完璧な結果に至っていないものが20台以上もあり、1台減らすと、また1台新車が来てしまう、で、大枚はたいて、わざわざ面倒を買っているようなものです。それを分かっていて、半分怖いもの見たさのように買うのですから、もう病気ですね。

写真は今日レイアウト上を走っている列車の一つ。ボルティモア・アンド・オハイオ鉄道のEL-5aクラスという、北米マレー機の創成期の2-8-8-0を単式連接に改装した罐で、同じ鉄道のEM-1クラスという近代的な2-8-8-4の重連が牽く75輌編成の貨物列車の後部補機を勤めています。

D&GRNの20-25/1000勾配で、最大級の2-8-8-2とか2-8-8-4ですと単機で標準38輌ぐらいのボギー貨車現車は牽けますから、75輌編成ならばEM-1の重連でも事足りるのですが、60輌編成を超えると、前方からの牽引だけでは、カプラーが上に競りあがって抜けたり、ループ線のカーヴで軽い貨車が内側に倒れたりすることもあるので、こうして、後1/3ぐらいは後部補機に受け持たせ、編成の中央に掛かるベクトルを分散してやります。このあたりは実物とまるきり同じです。75輌編成に後部補機や中間補機を付けても貨車の競り上がり脱線が起きなくなるまでには、線路と貨車の台車の整備は相当やりましたが‥

奥中山、塩尻峠、狩勝峠、矢立峠、大船渡線、篠ノ井線、中央東線、加太越え‥と、後部補機の奮闘を実際見てきて、後部補機が好きなんですね。米国の写真集でも、重連、後部補機、中間補機の写真を見つけると、その印象が目に焼きついてしまいます。私の場合、どういう基準で買う機関車を決めるのか、といえば、実物にそうした補機運転があったというのがまず第1の選択肢となり、西部、東部は、実はそれほどこだわっていません。

また、模型でそういう姿を再現してみたかったからこそ、敢えて山岳レイアウトに挑戦したのです。そういう点では目標は一つ達成した、と言えると思います。

最初の目標は20輌編成でした。その次は35輌編成。これをクリアーして、さらに線路と貨車の台車を整備して45輌の壁を破ってからは、あとは60輌、75輌も難しくはありませんでした。

写真のB&O EL-5aはオーヴァーランド・モデルズの13年ほど前の製品ですが、ほぼ同型のEL-3aとともに、購入当時は全くまともに走りませんでした。ポイントに掛かると必ず動輪が派手に脱線するのです。しかし見かけは前部台枠の首振りも十分、何にも問題はなく、数年首をひねっていました。

ところが、ある日、NMRAのチェック・ゲージを当ててみて驚いた。動輪のバック・ゲージがすべて小さかった、つまり、タイヤが車軸に打ち込まれすぎていて、それでポイントに来るとガード・レールに乗り上げていたのです。メーカーではテスト線路にポイントが無いため、まったく気付いていなかった。

結局、2台分、16軸の動輪をすべて外し、NWSL社の軸抜き工具でバックゲージをNMRA規格に合わせ、ついでのモーターも超強力のファウルハーバー1724SRに交換、見違えるような走行ぶりに変身しました。世界中でこの製品のうち、まともに走っているのはウチの2台だけだろう、あとは棚の肥やしに違いない、というのが私の密かな満足なのです。