アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.83

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地上部分が一応まとまった「クラム・ベイの船着場 Part2」を造船所構内反対側からご覧に入れましょう。

繊細で、レーザーカットのランナーから取り外すのも怖かった足場の脚部ですが、こうして横木を渡すと、嘘のように丈夫になりました。キットは最後まで行ってみないと真価は分かりません。この異色のストラクチャー一つが登場したことで、セクション全体がぐっと港湾らしくなりました。まさに、「レイアウトのストーリーを語るものはストラクチャーである」を如実に示しています。

もう一つ、心配していた未舗装道路と石畳の接合部も段差の均しを丹念にやったので、われながら自然な感じに行けたと思います。未舗装道路面のわだちは、例によって細かい砂をボンド水で固めたあと、線香立ての桐灰を指先で擦り込みました。仏壇でご先祖様に詫びて一つまみ失敬してきて、茶漉しで粒を揃えました。

今は神田で呉服問屋の社長に納まっている桟敷正一朗氏が学生時代に発見したテクニックですが、埃っぽい田舎道の表現に、これに勝るものはありません。

踏切手前の線路間と線路脇の、丈の短い草地はミニネイチャーの「バッファロー・グラス」を先に植えておいて、ある程度のメリハリを付けてから、これも前にクレメンタイン支線の丘の草地でレポートした、へキ社の「静電草蒔き器」で、ノッホ者やウッドランド・シーニック社の短繊維草材を取り混ぜたものを蒔いてみました。

これで面白かったのは、蒔いた当日、翌日より、3日目の方が、草がきちんと立ってきたことでした。あたかも実物の草が植えてから数日立ってシャンとするようで、草と草の間の隙間も実感的になりました。

こうした発見の楽しさは実地にやってみる者の特権です。

さて、次は、先日来ストップしているクレーン船の組立てですね。いよいよカレンダーとの勝負です。この高揚感がたまりません。

アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.82

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本日未明、「第13回国際鉄道模型コンベンション」に今年の新作として発表する「クラム・ベイの船着場Part 2」の地上部分がほぼ完成しましたので、写真でご覧に入れます。自動車はまだ固定していませんが、これが昨年以来、私が頭に想い描いてきた「Part 2」の景色です。

リゾート・エリアとしての賑わいを表現した「Part 1」から一転して、今回のセクション(長さ110cm) は造船所と工場兼倉庫の立ち並ぶ中を港湾貨物線が抜けている、人の気配も少ない地域です。旅客駅や商業地区を予定している「Part 3」(そして、もしかしたら「Part 4」の予感も)への橋渡しとなる部分という位置づけです。

最初からかなり具体的な構想として計画していた「Part 1」と違って、こちらは「成り行き任せ」で造った、というのが実情、といえましょうか?ただし、このセクションは人形で見せた「Part 1」に対して、「人形の数は絞る代わりに、ストラクチャーに付帯する小物の賑やかさで見せよう」という考えはありました。

具体的には工具類、船具類、荷物、ジャンクといったものです。

「Part1 」で燈台とレストラン、船具店を使った「ビルダーズ・イン・スケール」社のウオーター・フロントのセットの中で、最大で、且つ、一つだけ残った、小造船所を基軸に、それに合いそうなストラクチャー・キットを物色していってまとめたのが、結果として、こうなった、というところです。

途中でデッサンの変更もしました。

当初は小造船所の右隣は、「場末の小さなガソリン・スタンド」を予定して、ストラクチャー・キットも組み上げたのですが、そのころになって、米国で近年、港湾もののストラクチャーを盛んに発表している「モデル・テック・スタディオ2003」というレーザー・カットのキット・メーカーが、屋外での木造船の建造風景を発売したのを知りました。ちょうどウエストン・リンクのノーフォーク・アンド・ウエスタン鉄道の写真の中に、そうしたノーフォーク港付近の情景の後を蒸機が通り過ぎていく作品があったのを思い出しましたので、それをこのセクションに取り入れることにしました。

キットは水面に向かって傾斜している船台の上で造船して、滑走で進水させる方式を模型化していますが、私のセクションにはそれだけのスペースはないので、「平地で組み上げたのち、クレーン船で船台ごと持ち上げて、水面に下ろすのだ」という想定にして、ぎりぎりのスペースを確保しました。

数年前の、戦後初めて日本政府が外国船を実弾射撃した某国工作船の引上げや、昨年の大津波で陸地に乗り上げた中型船の回収作業で、キットの程度の大きさの船なら鋼鉄船でさえ、クレーン船での吊り上げが可能なことを知ったからです。また日露戦争の直前には、シベリア鉄道にはトンネルが無い事を幸い、とばかり、ロシアは欧露で建造した水雷艇を貨車積みでウラジオストックに鉄道輸送していました。これも当然、クレーンで積み下ろししていたのでしょう。(大雑把なロシアの気風を考えれば、下ろす方は貨車ごと、海に突き落としていた?)

但し、このキット、説明書には、ジオラマ仕立てにした全景2方向と数葉の部分写真と簡単な説明文しか載っていないために、いわゆる舟形の3Dは実際に組んでみないことには、今ひとつ把握しにくく、さらに、それを囲む作業デッキが付いた場合の必要用地がどれほどになるのかは、実地に足場を組みつけてみないことには、正確には割り出せない、という、いままで経験したことの無いものでした。

これに別売の板材置き場をどう組み合わせ、どう敷地の中に納めるか?1cmどちらかへ舳先を振っただけで、線路とのクリアランスが無くなるか、道路の幅が取れなくなるか、母屋とくっついてしまうか、となってしまうので、実は最後の最後まで心配させられました。

幸いに、材木置き場の建屋の位置に関して、いままで船台と平行、と決め付けていたのを「直角で母屋に付属した板材置き場と通路を挟んで対面」と発想転換しましたら、「これ以上1cmもずらせない」という絶妙な位置関係を割り出すことができ、逆にそこまで各方向のクリアランスを削ぎに削いだために、造船所全体の眺めが、当初頭に中にデッサンしていたよりもはるかに引き締まったものになり、また存在感も大きいものになりました。

まあ、「怪我の功名」という類ですが‥

しかし、これは本当に「怪我の功名」であって、本来、レイアウトというものは、「ストラクチャーをまず用意してから作る」が理想です。最低でも「ストラクチャー製作と並行して造っていく」のが正解でしょう。

そうすれば、「地形に無駄を生ぜず、かつ絶妙の間を取ったシーンが造れるはずです。私はこれをジョン・アレンの建設方法から学びました。

たしかに、一日も早く列車を走らせたい気持ちからすれば線路敷設は急ぎたい。しかし、ストラクチャーの寸法を当たらずに線路を敷きまわしてしまうと、ストラクチャーが入るべきところにクリアランスが取れていない、あるいはストラクチャーどうしの連携が構築できない、というようなことになって、そこでレイアウト建設はストップ、単に線路を固定しただけの走行盤に終わってしまうことになります。

そうなる原因のひとつは、TMS誌が永年掲載してきたレイアウト発表記事にあったのではないか、と最近思うようになりました。

どの辺りが起源かは調べていませんが、TMS誌に発表される「レイアウト建設記」には昭和30年代はじめから、ひとつの定番スタイルというのができていました。

それは「線路プランの説明」から入って、次に「電気関係」、そして「運転の実際」、それから「シーナリーの製作技法」に移って、最後にようやく「ストラクチャーの説明」に至る、というものですが、「ストラクチャー」の辺りになるともはや所定の文字量は尽きてきてしまうので、ごく簡単に終わってしまう‥つまりハードばかりが語られて、ソフト、すなわち「作者がそのレイアウトで表現したいストーリー」がほとんど、あるいは、全く語られないのです。

これが「レイアウト建設記」のお手本となると、読む方は「ハードさえ知ればレイアウトは出来る」と勘違いしてしまう。そして、現実にトライしてみると、たちまち立ち往生してしまう‥実際にはまず、製作者がストーリーを持っていなければ、カステラ箱大のレイアウトすら、作っても興奮はなく、作者自身さえ、そこに没入できる世界にはならないのです。

そして、そのストーリーを何より紡いでくれるのは車輛とストラクチャーの取り合わせでしょう。そのうちでも、私はどうもストラクチャーがそのレイアウトの眺めをリードしていくような気がします。シーナリーはむしろ、それに従っていくのではないか?最近、そんな気がしています。

なぜなら、ストラクチャーに従ってシーナリーを決めていくのは楽ですが、シーナリーに従ってストラクチャーを選ぶ、あるいはデザインする、というのは、実際にやってみると結構難しいからです。

で、今回またしても確信しましたが、このセクションの幅である1,100mm程度(先日1,200mmと書いたのは誤りです)がHOで一つのシーンとしてまとめを考えるのには「頃合い」ですね。

これ以上の広さを一度に作ろうとなると思考が分散して単調に流れやすくなるし、1,000mm以下の幅になると、寸法的な制限が大きくなって、デッサンやアイディアの幅が狭められてしまいます。

では、今回のセクションに単純に曲線を加えてエンドレスの小型レイアウトに仕立てるとどうなるでしょう。

小型の0-4-0や0-6-0、あるいは2-6-0、2トラックのギヤード・ロコ程度なら楽に通過する450Rを両袖に加えると、1,100mm+450mm+450mmで、線路中心での幅はちょうど2,000mmです。Rを400にすれば、1,900mmです。

そして、ジョン・アレンが写真に遺した不朽の名作レイアウト、初代「G&D鉄道」の正面幅は実に6フィート8インチ=2,032mmです。すなわち、「初代G&D鉄道」の直線区間の実際も、この「クラム・ベイの船着場 Part2」とほとんど同じだということです。

それなら、たとえストラクチャーを全自作しても、かなり濃密に作り込めるでしょう。

このセクションも、ポイントなど欲張らずに、4フィートx8フィートの米国サイズ定尺ベニヤの中に納まる小判型レイアウトに仕立てて、機関車と貨車を取っかえ引かえして遊んだら、飽きの来ないものになりそうです。